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福島からの復興宣言 

NO!原子力 福島からの信仰宣言 2012

1.原子力に関する宗教者国際会議は、2012年12月4日から7日まで福島県いわき市および会津若松 市において、日本、沖縄、韓国、フィリピン、タイ、ドイツ、香港、インドネシア、スイス、カナダ、 米国から87人が参加して開催されました。私たちは、2011年3月11日に起きた地震、津波、東 京電力福島第一原子力発電所の事故が、福島県と周辺地域の人びとと自然に与えた影響を目の当たりに し、同時に福島の現状に対する現地からの取り組み、あるいは海外からの支援連帯の現実にも触れまし た。家族と地域共同体が分断されている事実、住み慣れた家と仕事を失い、こどもたちの健康問題を憂 慮する人びとの叫び、とくに母親たちの苦しみと闘いに私たちは深く心をうたれました。「会津放射能 情報センター」の働き、また苦しむ人びとに連帯し、癒しのために奉仕するさまざまな働きを知り、さ らに原発廃絶とエネルギー使用を変えようと努力している海外の信仰共同体についての報告を受けたこ とも有意義な体験です。これらの証言は、私たちを励まし、希望を与えてくれるものです。

私たちは、砂場で遊ぶことを恐れるように教えられている3才の幼いこどもについての話に耳を傾けま した。こどもの健康を守るために転居を決めた母親が、汚染された地域から去ることをまわりの人びと に言えず、嘘をつかなければならなかった苦しみを彼女の夫の口から聴きました。果たして再び海に出 て、漁を続けることができるのか、まったく見通しのたたない漁師の嘆きの声も心に残りました。また 福島の住民が、健康について医師のセカンド・オピニオンを聴くことを阻まれているという事実も忘れ ることができません。地域に政府が設置した放射線測定器と、個人の測定器の測定値との明らかな違い についての映像、汚染地域に残され死を待つばかりの牛、自らの命を断った人が最後に書き残した一言 「原発さえなければ」の文字、無人の禁止区域にかけられた「原子力明るい未来のエネルギー」の看板 などが、無言のうちに私たちに語りかけました。会議で話された仏教の僧侶の方の言葉「苦しんでいる 人たちがお互いに傷つけあう福島になってしまいました。福島が叫んでいます。大地が空が泣いていま す。福島の声を聴いてください。声にならないこどもたちのいのちの叫びを聴いてください。」原子力 についての真実を見据えながら、私たちは「いのちは宝」であることを、祈りのうちに受けとめ、宣言 します。

2.2011年に沖縄で開催された第三回9条アジア宗教者会議を覚えながら、私たちは今ここでオキナワ とフクシマの人びとが直面している苦しみの共通点、とくに差別と人権侵害の現実を見たのです。それ は政府と企業が一人ひとりのいのちと共同体の生活権、さらに環境を優先せず、その決定によって傷つ けられ、被害を受けた人びとに正義に基づいた補償がなされていないこと、共同体が分断されてゆく悲 しさ、さらに原子力と軍事力の関連性についての真実でした。私たちは、政府、軍隊、企業とマスメデ ィアが共謀して、「人間にとって有利である」とする原子力と基地を推進している事実と、オキナワと フクシマの人びとの経験が、まったく矛盾していることを確認しています。オキナワとフクシマの体験 から学ばせていただいた私たちは、「いのちが宝」であることを、あらためて強く訴えます。

3.私たちの体験と学びによって、原子力は決して安全ではないこと、放射線による被曝には安全基準は存在しないこと、原子力と「いのち」平和は、まったく互換性のないことを確認します。核兵器と原子力 は、実にひとつのコインの両側であって、政治、軍事、経済の複合体が、自分たちの利益のために創りあげたものです。原子力は、人間のいのちと環境にこの技術が与える悪影響を無視し、当初から戦争を

目的として、政治、軍隊、企業によって開発されたのです。原子力技術を開発しながら、核兵器を表面的に否定する国ぐには、自然とその力を支配できると信じる傲慢を露呈しています。多くの国が、核兵器の製造と備蓄はもちろんのこと、発電施設としての原発の建設のために、巨額な費用をつぎ込み続け
ました。より意味のある人間のニードのために役立てるのではなく、環境を破壊し、人間、動物と植物
の死と疾病を招き、それらのDNAを変え、国家あるいは非国家からの核攻撃の危険に住民をさらし、
人間と自然界の生死を左右する重要な決定を不完全な人間の手に渡してしまったのです。人間は過ちを
犯すが、その過ちから利益を得るものは、過ちを無視し、また学ぶことをしないという事実に、あらためて気づかされています。

4.私たちは、真摯にいのちを育み、どこまでもいのちを守ること、さらに原子力と核問題について真実を語り、誤解を招く「安全神話」を明らかにすることを、信仰者の責任として引き受けます。この責任を原発事故によって苦しんでいる方がたの声を注意深く丁寧に聴きとることによって果たします。苦しむ人びとに寄り添い、彼らに課せられた不正を明らかにするために、彼らと心を一つにして行動することを約束します。さらに政府と企業による放射性物質の移動をモニターし、周縁部の共同体、原子力を持たない国、そして未来の世代に核廃棄物が押し付けられる問題について、警告を発します

5.上記に基づき、私たちは決意します。

✓ 私たちの信仰共同体において、原子力の民間および軍事利用についての真剣な討議を始め、個人の生活様式を変えることを含む、信仰共同体としての行動計画を立ち上げること。

✓   核兵器と原子力技術の関連性についての真実を広く知らせ、原子力についての誤った情報と情報隠しについて問いかけ、公表すること。

✓  原子力の誤った利用について直接的非暴力行動を始めること。

✓  原子力の廃止を実現するために、すでに存在している信仰共同体と組織、また真実と修復的正義に取り組んでいる良心的科学者とその他の組織との協働ネットワークを築くこと。このようなネットワークは宗教や国家の壁を越えたものである。

✓ 福島の人びとおよび原子力のもたらした被害によって苦しんでいる他の共同体とともに祈り、その声を増幅して彼らの体験を世界に告げること。

✓  2013年世界キリスト教協議会の総会にこの宣言を届け、原子力についての分科会を実現させること。

✓  原子力に頼る社会を、真に持続可能、クリーンで安全なエネルギーに基盤を置く社会へと変革するため
に働くこと。

6.福島で開催された「原子力に関する宗教者国際会議」は、原子力のもたらす苦しみの現実について、多宗教、多民族の参加者の目を開かせました。私たちは、原子力の廃絶、原子力ゆえに苦しむ人間共同体の癒し、環境(創造の業)を取り戻すために、できる限りの努力をすることを誓います。今、ここから、この決意と責任を果たすために、それぞれの共同体に戻ります。

2012.12.7

 原子力に関する宗教者国際会議参加者一同